豊かな自然に恵まれた福島県相馬郡飯舘村。
かつてはブランド牛の生産地として知られ、酪農も盛んでした。
しかし、福島第一原発事故後、放射能汚染が懸念された飯舘村の牛たちは牛乳の出荷も、移動も、牧草地の草を食べることも禁止されます。さらには、2011年4月に全村避難が決定。村民の多くが暮らしと生業を突然うばわれてしまいました。2017年3月には帰還困難区域を除く全ての区域で避難指示が解除されましたが、6年という年月はあまりに長く、帰村した村民は約2割※にとどまっています。(※2022年12月現在)
牛を続けた人、やめた人。飯舘村を離れた人、戻った人。
この間、一人ひとりが大きな人生の選択をしてきました。牛(べこ)とともに生きてきた母ちゃんたちも、どん底の思いをしながら、それぞれが悩み、苦しみ、ときには笑いながら生きてきました。
その強さと逞しさに惹かれたのはパレスチナの女性たちの取材を長年続けてきた古居みずえ監督。福島に拠点を構え、故郷、生業、家族のはざまで揺れる飯舘村の女性たちの心情を丁寧に記録。10年以上の撮影・制作期間を経て「第1章 故郷への想い」「第2章 べことともに」「第3章 帰村」の全3章・3時間に及ぶドキュメンタリーを完成させました。